いわゆる黎明期から介護業界の第一線で営業を続ける老舗企業の着実な市場拡張プラス、新規参入者の急成長など、介護業界は一見する限り、盛況を続けていると映る業種でしょう。しかしながらこれはあくまで規模の話であり、肝心のサービス内容や顧客満足度に関しては、量に対して質が追いついていない感が否めないもの事実です。世の中全体の価値観の変化も影響していますが、報道される介護ビジネスにまつわるトラブルやクレームの中には、俄かには信じがたい内容が含まれています。介護サービスを提供する業者にとって、自社利益の追求が最優先課題であることに間違いはありませんが、今一度業界全体で、その質について考えるべき時期を迎えていると言えるでしょう。

業務拡張を焦るあまり、十分な人材確保や人材育成が伴わず、それが離職率アップを招き、慢性的な人材不足と従事者の過剰労働につながる悪循環は、各方面から伝えられています。それが要因となり、サービスの質が低下し、施設環境の充実と相反して、介護従事者の対応レベルが低下してしまえば、その事実はより利用者に伝わってしまいます。自ずと生じるクレームは現場従事者の意気消沈を招き、結果的に大切な顧客を失ってしまう負の連鎖は、介護業界全体の至るところに潜むリスクです。介護には様々な専門知識と培った経験やスキルが求められるという、基本中の基本の再確認が、今同業界全体の急務であり、速やかな実践が望まれます。